粟鹿神社
昨日の早朝の事である。突如響いた町内放送に呼び起されたのは。それは、初めて聞く緊急地震速報の音であった。そしてその直後、我が家は振動に襲われたのである。
これはいかん。慌ててテレビをつけ、情報収集。淡路島で震度6。大地震だ。脳裏に阪神大震災の、東日本大震災の記録映像が流れる。一体淡路はどうなったのか―
しかし、こういう時、テレビは各地の震度を繰り返すばかりで、現地の状況を映し出すには時間がかかる。一応家中を点検し、異常無い事を確認、少し間をおいてテレビやネットで情報を集める。どうやら大惨事にはなっていないようだ。ホッと胸をなでおろす。
さて、どうしようかと空を見る。快晴だ。もう一度寝直してもいいが何となくもったいない。よし、何処か行くか。と、但馬へと車を走らせることとした。目指すは今話題の天空の城、竹田城。
が、竹田城の麓に到着した私は眼前に現れた光景に愕然とした。登城路を埋め尽くす車、車、車…とんでもなく長い車列が山麓まで延びていたのだ。そして最後尾付近に置かれた看板には、こう書かれていた。
60分待ち。
ディズニーランドか!以前から度々メディアで取り上げられていたのである程度の人出は覚悟していたが、ここまでとは思わなかった。これでは長時間を耐えて城に着いても、人ごみにもまれてろくに城郭を観察できないであろう。
冗談じゃねえ!俺は降りるぞ!どこかで聞いたような捨て台詞を車中で吐き捨て、大軍に占拠された竹田城から退却することとした。しかし、このまま帰ったのではもったいない。何処か面白そうな場所はないか…周辺地図をざっと見渡す。と、そう遠くない位置に但馬一ノ宮があるのを見つけた。よし、ここにしよう。
こうして私は、但馬一ノ宮、粟鹿神社へと向かうのであった。
粟鹿神社は不思議な神社であった。
一ノ宮というからにはそれなりの参拝者でにぎわい、門前町の一つでもできているのかと思いきや周囲には何もなく、客は私のみであった。後で調べたところによると但馬では他に出石神社が一ノ宮を名乗っているらしい。そちらには行かなかったが、客がそちらのほうに流れているのかもしれない。
鳥居の先に参道が伸びるが、この参道は門前で弧を描いており、そのまま進むと反対側の集落へ出てしまう。さらに、神門の周囲には塀が造られ、境内と外部は完全に隔絶されている。普通神社は塀があることは少なく、その特異な配置に最初塔頭寺院かと勘違いし、そのまま直進して外へ出てしまった。しかし、実際にはその塀の中こそが粟鹿神社なのであった。
また、事前情報無しに赴いたのでまず由来書などを読もうと思ったのだが、本来大きな神社には必ずあるであろう説明板の類がないのである。各所にある文化財の解説や摂社の名称を示す看板はあるのだが、肝心の由緒や祭神の案内だけがごっそり抜けおちている。これは何か秘するべき理由があったのであろうか。
不可解な場所ではあるものの、但馬地方有数の古社であることに変わりはない。神門脇の閉じられた門は勅使門で、応仁の乱の戦火をかいくぐった室町建築という。
境内への唯一の入口となる神門。
神門は随神像が守護する。
随神像の背後では木造の狛犬が境内を見守る。
神門をくぐった先には土俵がある。相撲は本来神へ奉納されるものであり、ここではその形が残っているのだ。
土俵の先が拝殿。社殿は神門に面しておらず、正面の鳥居から入った場合、参拝者は社殿の斜め後ろからぐるりと回って正面へ向かう形になる。どうしてこのような不思議な形になっているのか…
本殿。彫刻の類はないが、堂々として見事な建築。背後の丘陵は古墳らしい。
拝殿の脇、参道の正面に当たる場所には泉があり、厳島神社がある。
厳島神社の奥には茗荷神社がある。粟鹿神社の神紋は茗荷紋であり、それはこの茗荷神社に由来するということだが、ではこの茗荷神社はどういう神社なのかという疑問が残る。
この神社、水面に土台を組み、その上に鎮座するという独特な形状をしている。厳島神社共々水神ということか。
境内奥には稲荷へと誘う石段がある。一見千本鳥居かと思ったが鳥居の数は少ない。
社殿自体は小さなもの。
拝殿脇には猿田彦神社。いわゆる庚申社。
社殿の中には神馬があった。
神門脇の菅原神社の前に砲弾を埋め込んだ石碑があった。碑文が刻んであるのが確認できたが文面は解読できず。いつの戦争のものであろうか。
神門前の社務所に掲げられた扁額。ずいぶんといびつな形状の火縄銃だ。
飛び入りの参拝であったが、全体に神秘的な雰囲気漂う神社でなかなか楽しめた。
帰路、もう一度竹田城に挑んでみたが、車列はさらに伸びており一向に減る様子はなかった。
どうやらブームが過ぎ去るのを待つ他はなさそうである。
その帰り道、香住町内にて変なものを見つけた。飛び出し坊や…だと思うのだが、何やら微妙なキャラクターが描かれている。子供向けアニメのキャラクター然とした髪型、ババ抜きのように手で広げたカード、そして足のカードパック。どうもカードゲーム系アニメのキャラのようだが、私の知る作品で該当するキャラクターはいない。私が知らないだけなのか、それとも単なるパチモンか…一体何者なんだ…
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2013.04.14 | | Comments(0) | Trackback(0) | 兵庫の神社